プリセプターとうまくやるためには

プリセプター制度とは、新人看護師が一年を待たずして辞めていく現状を食い止めるために、先輩看護師がマンツーマンで指導や相談にあたる制度です。
看護師の求人にも、よく「プリセプター制度あり」という記載を見かけます。
「白衣の天使」のイメージはたいへん根強いもので、看護師学校から卒業してきたばかりの看護師の崇高なイメージと違い、現実には患者さんの下の世話もあり、人々の苦い人間模様も生き様も見ていくことになります。このリアリティショックを和らげ、親身になって相談できる相手として、プリセプターが選ばれます。
ところが、看護師という聖職であっても人間です。人として合う合わないは必ずあります。また、ここが肝心ですが、プリセプターになる先輩看護師もプリセプターに初めてなった人もおり、どのように指導したらよいかわからないと暗中模索の状態で指導している場合もあります。プリセプターとうまくやっていくためには、どのようなことに注意して行ったら良い関係が築けるのでしょうか。
プリセプター制度の最大のメリットは、マンツーマン指導ですから知りたいことがあればすぐに教えてもらえる・処置の方法などをすぐに実践してもらえる・相談できるなどというメリットがあります。実は、処置方法やコツなどは看護師によって微妙に変わっていることがあります。そういった場合、一人のプリセプターから一貫して教えてもらうことで、混乱を避けることができます。
また、ミスの予防にもなります。先輩看護師が常にそばにいるので、新人看護師であってもミスをしてしまう前に事前にチェクすることができます。そばに先輩看護師がいるからいざという時はフォローしてもらえるという安心感がありますので、ミスを怖がらずに目の前の作業に集中できるという利点があります。新人の頃はとにかく様々な出来事が大きく感じられてしまい、深く悩み込んだり体調を崩してしまったりといった事が起こってきます。そういったメンタル面でのフォローもしやすいといった特徴があります。
看護師学校時、もしくはそれ以前から家事は一通り学んでおくこと・メモを取りながら聴くことが大切です。
「雑巾の絞り方もわからないの…」新人の中には、看護師学校を優秀な成績で卒業したのに、雑巾の絞り方から自分の食事のつくり方までわからず生活力がない学生さんがいます。学生のうちに、おうちの人から掃除・食事のつくり方・洗濯などに関してはしっかりと学んで自分ですんなり自活できるようにしておきましょう。特に料理は段取り力がなければできません。レシピに沿って正確に仕事をすることは看護師の仕事にも通じます。
「最近の新人は、メモもとらないのよ…」と言うプリセプターが結構います。看護師の仕事は、多岐に渡っており、「一度教えたことは覚えて欲しい」というのがプリセプターの願い。三度までは教えてあげても良いのですが、それ以上「これどうやるんでしたっけ…」と言われると、ついむっとしてしまうのが人情です。数値や手順、名称等、教えてもらったことを常にメモしましょう。メモすることで頭にすり込むことができますし、寮に帰ってから、今日学んだことを復習しやすくなります。プリセプターが「明日はここについてやるから」と言われた部分で、自信のないところがあれば事前に予習しておくことも必要です。結局わからなくて、聞いてしまった時でも、メモをとっていることでプリセプターにも「頑張る意志がある」ということを伝えることができます。
プリセプターに指導してもらっていることで、わからないことや疑問が浮かんだ時は、その場で頑張って聞きましょう。時間が経つと「なんであの時聞かなかったの?」ということになり、プリセプターにも悪い印象を与えてしまいます。「今とっても忙しそうだな…」と迷う場面であっても、「すみません」と一声かければ大丈夫立ち止まってくれます。言わないでわからないことを貯めていくと、自分のためにもなりません。その場でできるだけ疑問点をクリアしていきましょう。
プリセプターも人間ですから、ちょっとしたミスを指摘してやり直しすれば良いものでも、つい大声で怒鳴ってしまったり、「モタモタしてないで、次々!」と急かしてしまったるするともあります。やればやったと怒られる、やらなければやらないと怒られるといった、なんだかタイミングが合わない日もあります。先輩看護師もいろいろあるのだなあ…と、そういう時はスルーしてあげましょう。
人間関係がギクシャクして、どうにもならなくなってしまった場合は、稀ですがプリセプターを交代する場合もあります。けれども、プリセプターの期間を終了してもその病院でずっと共に働く仲間であることには変わりありませんから、結構長年気まずい思いを抱えたまま勤務することになってしまいかねません。
「できればこうして欲しい」ということがあるのなら、プリセプターの手が空いているときにでも、「実は…」と話してみましょう。意外と「わかった、次からそうしましょうね」とすんなり通ってしまうこともあります。黙っていれば伝わらないし改善しません。困っていることがあるのなら、自分だけで腹に貯めておかずに、声に出してみましょう。きっと明日は少し変わってくるはずです。
先輩看護師とどうしても合わなくて、毎日お腹を壊したり、ひどい頭痛などに悩まされたりした時には、まず「具体的にどこがあわないのか」ノートに書き出してみましょう。例えば、「わからないことを聞いたのに、全く答えてくれない」「ミスしたことばかりせめて正解を教えてくれない」「執拗に知識を試してくる」「ほかの看護師や患者の前で罵倒された」等、具体的にいつ・どこで・誰が居る場面でこうなったということを書き出します。その記述をきちんと貯めておくことで、書いている自分自身も、「この先輩はこういうことをすると激しく怒るんだな」「この日は結構褒めてくれた」等、客観的にその先輩のことを見ることができるようになります。時間がない中で、どの程度記述できるか難しいところですが、書くことで見えてくる「先輩の本当の意図」もあります。
どうしても合わない。体を芯から壊してしまい、看護師をやめたほうが良いかなと考え始めたならば、このノートを上司に見せて相談しましょう。
新人看護師さんは本当に大変です。一年を待たずにやめていく人も本当に多いです。憧れて辛い勉強も実習も乗り越えてきた看護師への道。やめてしまうのは本当にもったいないですね。体が続くならば、最低でも一年間はなんとか乗り切ってみましょう。
なぜならば、一年間をやり過ごしてみると、二年目はもうちょっとだけ楽になるからです。この一年間で学ぶことはこれからの看護師人生を支えるぐらいに大変貴重で重要なことです。この時期に悩み苦しんだことが今後の看護師人生の支えになります。なんとかこの一年目のハードルを乗り越えてください。きっと数年たった後、ご自分がプリセプターになったとき、「先輩もきっとこんなふうに悩んだんだろうな…」と感じることができるはずです。
教える方は学ぶ方の三倍勉強しなくてはなりません。教える側ならではの悩みもたいへん深いものなのです。ぜひ素晴らしい看護師の夢をあきらめず、とりあえず「今日よりも明日」の気持ちで一つ一つを乗り越えていってください。